こんにちは。
春はフィラリアの検査も含めた健康診断の時期ですよね。
健康診断で異常値があった場合、本人に症状がなく飼い主さんも気がついていなくても検査を進めていくことで「病気」と診断され薬を処方され飲み続けている子達も多くいると思います。
しかしながら私個人的には
「投薬が必要な病気は症状があるものであって、健康診断でみつかる自覚症状のないものに関しては『未病』、それは食事や生活習慣で改善させていくもの」
と思っています。
今回のブログではその「未病」の段階でいかに飼い主さんや我々動物医療関係者が気がつくことができるのかについて書いてみたいと思います。
少し長いですが
動物たちの違和感にどうしたら早く気がつけるのか?
どうしたら動物たちに負担なく違和感に気がつけるのか?
ということをまとめました。
まず病気の意味を調べてみました。
「生体がその形態や生理・精神機能に障害を起こし、苦痛や不快感を伴い、健康な日常生活を営めない状態。医療の対象。疾病 (しっぺい) 。やまい。」出典:goo 辞書,https://dictionary.goo.ne.jp/word/病気_%28びょうき%29/
「生物の全身または一部分に生理状態の異常を来し、正常の機能が営めず、また諸種の苦痛を訴える現象。やまい。疾病しっぺい。疾患。」出典:広辞苑,https://sakura-paris.org/dict/広辞苑/content/16756_1550
苦痛や不快感などを呈する、つまり症状がありそうです。
さて、「病気」とは別に症状のない病気に近い状態として「未病」という概念がありま
未病には自覚症状はないが検査で異常が見られる西洋医学的未病と、自覚症状はあるが検査では異常がない東洋医学的未病があります。健康と病気の間を捉える場合、Disease(疾病・疾患)、容易ならざる状態とは異なり、Illness(病気・体調不良)、気分が優れず何となく普段と違う段階はセルフメディケーションがより働くステージであり、これらの一部も未病域に入ります。[1]
この未病の段階でいかに早く気がつけるかがポイントなのかなと考えています。
この段階で気がつくことができれば手遅れになる事も少なくなると思われます。
「未病」の段階で我々動物医療関係者や飼い主さんがいち早く気がつくポイントは、
・いかに健康な状態のその子を見てあげるか。
・いかに飼い主さんとのコミュニケーションを深め、些細なことを話してもらうか。
まず病気、症状は「健康、正常な状態からの逸脱」と定義されています。
つまり健康、正常な状態がわからないと病気なのかどうかは判断できないという事。
例えばチャイニーズクレステッドドッグという犬がいます。
この犬はもともと毛がありません。それが正常なんです。
しかしそれを知らないとその犬を見た瞬間に全身に脱毛がある、これは病気だ、となってしまう。
これは極端な例ですが、その子それぞれ、正常な状態には差があります。
さて、ここで疑問。
我々獣医師はどれくらい健康な動物を診てあげられているのでしょうか?
獣医師はとても大変な仕事です。
患者は喋らないし動物は寿命が短い分、症状の進行がとても早い。
その中でどれほど健康な動物を診る時間があるのでしょうか?
普通の病院では年に1回の健康診断や予防接種の時期に少しだけしか見てもらっていないんじゃないでしょうか?
そんな中でその子の異変に気がつくことが果たしてできるのか?
まして動物はたくさん病院に来院するため、年に数回しか会わない子をどの程度把握できるのか?
自分だったら全員を把握するなんて無理です。
ではどうしたらいいのか?
私は大きく分けて2つの方法があると思います。
まず一つ目
爪切りや肛門腺、またはトリミング施設のある病院では定期的に健康な動物が来院されます。
これらを担当する動物看護師さんやトリマーさんは正常な動物を見るチャンスがあります。
特にトリマーさんは健康な動物を1時間程度かけてじっくり観察しています。
以前勤務していた動物病院でも飼い主さんや我々獣医師が気がつかないようなできものや皮膚炎などにいち早く気がつくのはトリマーさんでした。
もちろん獣医が爪切りなどを行なってもいいと思います。
そして2つ目
いかに健康な動物を連れて飼い主さんにきてもらい獣医師に定期的に診てもらうか。
ここで私が勤めていた病院、そして現在勤めている病院での取り組みをいくつかお話しします。
私が勤めていた病院では「フィラリアなどの予防薬を毎月病院で飲ませる」ということが普通に行われていました。
おそらくこの方法をとっている動物病院はあまりないと思います。
本当に毎月、5〜12月まで飲ませにきてもらってました。
また暖かくなって草むらなどに散歩に行く子はその時期からノミダニの薬をやはり病院で飲ませていました。
これをやっていると必ず月1で健康な動物たちと接します。
さらには爪切りや肛門腺、耳掃除なんかも全部獣医がやっていました。
毎回の体重測定や聴診もしています。
それぐらい通ってもらうと1年間でほとんどの子たちの特徴はなんとなくわかるものです。
そしてもっと重要なのが「飼い主さんとのコミュニケーション」です。
飼い主さんからしても年に数回、数分間しか会わない先生はなかなか話しにくいのではないでしょうか。
それに比べて毎月定期的にあっていれば動物たちの日頃の話はもちろん、人間同士のプライベートの話もできるようになります。
皆さんは獣医師と家族、食事、美味しいお店、車、お金、その他の他愛もない話をどこまでしているでしょうか?
これらの話を受付の人や看護師さんとしている人はいるかもしれませんが、獣医師と話をしている人はあまりいないんじゃないでしょうか。
もちろんこのような話は診察には直接関係ありませんが、このような話ができる間柄だと本当に些細なこと言ってくれるようになります。
その些細なことが動物たちの異変に気がつく、とても重要なことなのではないかと考えています。
そして獣医師とのコミュニケーションを取るもう一つ重要なポイントとして「信頼関係」が挙げられます。
皆さんはどれぐらい獣医師を信頼していますでしょうか?
また獣医師もどれぐらい患者さんを信頼できているでしょうか?
人間はコミュニケーションを取らないと生きていけません。
コミュニケーションを取れないと夫婦や友達、同僚との関係も築けませんし、不安な患者さんと診察で忙しい獣医師の信頼関係を築くのは難しいと思っています。
逆に普段からのコミュニケーションをとっていれば些細なことまで相談できるようになるため、動物たちの異変を飼い主さんたちは伝えやすくなると思います。
このご時世もあり現在勤めている病院では毎月のフィラリアなどの薬を病院で飲ましている子は少ないです。
しかし動物病院でフードやおやつを販売する事で、定期的に飼い主さんと話をしたり、動物の体重チェックをしたりする事は行なっています。
その際にも少しでもいいから話をしていくということも重要になってくると思います。
検査や治療内容に正解はありません。
動物達の年齢や既往歴、性格や家庭環境など様々な面を考慮し決定しなければいけません。
日常的なコミュニケーションを通して信頼関係を構築していくことが、より良い治療につながると考えています。
以上が私が心がけている事です。
動物の未病の段階でその異変に気がついてあげる事はとても難しいと思います。
しかし手遅れになる前に動物たちの異変に気がついてあげる事は、このように動物病院に来る仕組みを作ったりコミュニケーションを円滑に行う事で可能になるのではないかと考えています。
是非ご参考にしてみてください。
参考資料
- 一般社団法人 日本未病学会/Japan Mibyou Association https://www.j-mibyou.or.jp/mibyotowa.htm
コメント
先生にはいつもお世話になってます、わたしは永井さんに30年お世話になってますが世間話や様々なお話がこんなにできるのは林先生が初めてです。初代の亡くなられた院長先生も良い方で無駄ばやなし、そして動物の事を考える良い先生でした。そうでないと信頼できませんよね。林先生に巡り会えた事本当に感謝しています。ありがとうございます
ありがとうございます!
かしこまりすぎると飼い主さんも緊張するので、ラフを心がけています。