犬のワクチンについて(抗体検査ってご存知でしょうか?)

こんにちは。

おそらく多くの方が毎年受けておられる「混合ワクチン」について、お知らせも含めて書きたいと思います。

もうすでに何度かワクチンの話はしましたが、世界小動物獣医師会(WASAVA)では犬猫の混合ワクチンの中のコアワクチンに関しては基本的には3年より短い間隔では打つべきではない、と記載されています。

「ワクチンは不必要に接種すべきではない。コアワクチンは、子犬および子猫の初年度接種が完了し、6ヵ月または12ヵ月齢で追加接種(ブースタ ー)を終えたら、3 年毎よりも短い間隔で接種すべ きではない。なぜなら、免疫持続期間(duration of immunity, DOI)は何年にもわたり、最長では終生持続することもあるためである。」[1]

コアワクチンというのは

パルボウイルス(主に子犬の下痢、血便)

ジステンパーウイルス(結膜炎、呼吸器、消化器、痙攣などの神経症状)

アデノウイルス(主に子犬の肝炎)

の感染症に対するワクチンです。

最長では終生、つまり一生免疫が持つかもしれないワクチンを毎年打つ必要はないと思っています。

また混合ワクチンに入っている「ノンコアワクチン」には次のような記載がされています。

「ノンコアワクチンを、地理的要因、その地域の環境、またはライフスタイルによって、特定の感染症のリスクが生じる動物にのみ必要なものと定義している。」[1]

現在の混合ワクチンに入っているノンコアワクチンに関しては

アデノウイルス(咳、くしゃみなどの風邪症状)

パラインフルエンザウイルス(咳、くしゃみなどの風邪症状)

コロナウイルス(下痢)

レプトスピラ(発熱、黄疸、腎不全等)

が入っています。

上の2つ、アデノ、パラインフルエンザウイルスに関しては「ケンネルコフ」と言われる風邪症状を引き起こしますが、悪化すると肺炎になることもあります。

これらはペットショップや保護施設などの多糖飼育下の1歳以下の子犬でよく認められるとの報告がありますが、家庭で飼われている犬達では見ることがほとんどありません。

少なくても私が診察してきた地域では流行っていませんでした。

コロナウイルス感染症は下痢を引き起こします。

しかしながらこのコロナウイルスに関しては次のように記されています。

「犬腸コロナウイルスワクチンが防御効果をもたらしている、または腸コロナウイルスが実際に犬における重大な病原体になっていることを示す十分な証拠はないため、VGGは犬腸コロナウイル スワクチンの使用は推奨しない。このウイルスの変異株が、成犬および子犬において重度の全身性感染症を引き起こすことが、世界各地で報告されているが、現在使用可能なワクチンがこれら変異株から防御するかどうかは不明である。検査キットを用いた検査でコロナウイルスが検出された場合も、コロナウイルスが徴候の原因になっていることを示すとは限らない。」[1]

VGGというのはWSAVAワクチネーションガイドライングループのことです。

つまりコロナウイルス感染症に対するワクチンは推奨されていません。

レプトスピラに関してはどうでしょうか?

私は実際にレプトスピラ感染症に罹ってしまった犬をみたことがあります。

その子はワクチンを打っていませんでした。

その子は川沿いに住んでいて、川沿いの水たまりの水を発症数日前に飲んだとのことでした。

レプトスピラはネズミなどの野生動物の尿に菌が排泄され、水分の多い場所で長期間(数ヶ月間)生き延びます。

ですので川沿いや田んぼ、沼地にいくような子は予防してもいいと思われますが、街中しか散歩に行かない子達に関してはリスクは低いと思われます。

実際にワクチン接種をしている犬達の中でもレプトスピラが入っていないワクチンを打っている子が多くいますが、罹患(発症)していないところを見ると、必ずしも全員に必要なものではないと思われます。

さて、長くなりましたがここまで見ていると、ノンコアワクチンに含まれる感染症が実際に流行っている地域は私が見る限り限定的です。

つまりノンコアワクチンは全員に必要ではない可能性があるため、ワクチン接種はコアワクチンを最低3年に1回でいいものと思われます。

が、ここで問題が。

コアワクチンの3種のみが入ったワクチンが日本では発売されていないんです。

つまりコアワクチンを打とうと思うと、必然的にノンコアワクチンも入ってきてしまいます。

3年に1度なら打ってもいいと思われる方もいると思いますが、やはり不要なものは打ちたくないという飼い主様も多いのではないでしょうか?

そもそもガイドラインにはコアワクチンの免疫は数年、長い子だと終生持続すると書いてあります。

ですので本当に打つかどうかはこの「抗体」の存在を確かめてからでもいいのではないかと思っています。

コアワクチンの抗体価は血液検査で測れます。

その交代価が十分に存在すれば、その年はワクチンを打たなくてもいいと思われます。

当院ではワクチンの抗体価の検査を実施しております。

ワクチンを打つかどうかの指標にも使えますが、トリミングやホテルなどのワクチン証明書の代わりに使用できる所もここ最近増えている感じがしています。

もし「毎年のワクチン接種に疑問を持たれているが証明書が必要」という方がいましたら、診察時もしくはお電話でも構いませんので、お気軽にご連絡ください。

参考文献:1. https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

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