飼い主さんの気持ちをいかに盛り上げていくか

こんにちは〜

4月に入りそろそろフィラリア予防の季節が近づいてきました。

頑張ってフィラリアに関してブログを書こうと思ったのですが、全然筆が進まない😱

ってことで今日は最近感じている事をつらつらと書きたいと思いますw

最初の病院の治療のポリシーとしてあげていた文言があります。

「すべては動物とその飼い主のために」

動物病院はもちろん動物を治療するための施設です。

そして獣医師の仕事は動物を治療することです。

この点を疑う方はいないと思います。

しかしもう一つ大切な仕事があります。

それは

「動物を診る事を通して飼い主さんの気持ちを楽にしてあげる」

これは私が最初に勤務して以来ずっと思い続けている事です。

この仕事はとても難しいんです。

動物のためにやる事であっても、最終的に飼い主さんが満足し家庭が明るくならなければ意味がない。

例えば抗癌剤。

リンパ腫の標準治療に抗癌剤治療があります。

どの教科書を見ても抗癌剤治療を行うのがスタンダードと書いてありますし、やらなかった予後についてのデータなんてほとんどありません。

もちろん抗癌剤を行った方が予後が伸びるというデータが多いことは認めますし、ある一定の効果はあるものと思います。

しかし、リンパ腫は抗癌剤では治りません。

というか抗癌剤は癌を治すためのものではありません。

抗癌剤を使用しているとだんだん効かなくなってきます。

そのため現在では効かなくなる事を見越して最初から数種類の抗癌剤を組み合わせる治療が標準的になっています。

ここで問題なのが、抗癌剤が効かなくなったら次はどうするのか?という事です。

人間の医療でもそうですが、抗癌剤はいずれ効かなくなります。

動物では数ヶ月程度で効かなくなることもあります。

数種類の抗癌剤を使用しているということは、数種類に対して耐性を獲得し効かなくなってしまうということなんです。

ここで「じゃあ抗癌剤をやめましょう」という獣医師はおそらく少ないと思います。

なぜか?

それは、一度始めてしまうと様々な抗癌剤の効果に懸けてみたくなるから。

抗癌剤を変えれば初めの数回は腫瘍は小さくなるかもしれません。

だから効いたと判断するんです。

しかしその後は使う前よりも速いスピードで大きくなってしまいます。

それはなぜか?

抗癌剤は癌だけでなく若い細胞全てを叩きます。

その中には免疫の80%を担っている腸の細胞や、血液の大元の幹細胞たちも含まれます。

このような細胞が死んでしまうと免疫は崩壊し貧血、低酸素になり余計に腫瘍ができやすくなってしまいます。

さて、私はもちろん抗癌剤の使用について全て反対するわけではないですし、望まれている方がいるのであればそれを行うこともいいと思っています。

しかし獣医師として考えたいのは

・動物は抗癌剤の副作用について何も知らされていない

ということ。そして

・飼い主さんの心理的、経済的な余裕がどこまであるのか

ということです。

人間が抗癌剤を行うにあたり、知識のない方でも自分の病気については調べ、抗癌剤の副作用なんかも調べるでしょう。

人間は自己責任で治療をはじめるので、そこに関してはやりたい方はやればいいと思います。

しかし動物はどうでしょうか?

動物は長生きしたいとか病気を治したいとかは全然思っていません。

常に「今」しかみてないんです。

飼い主さんと一緒に過ごし、美味しい物を食べ、よく遊びよく寝る。

これ意外に幸せはないと思っています。

そんな動物に対して抗剤治療はとても大きな負担になります。

毎週の通院、検査、抗癌剤注射。

副作用を抑えるための投薬。

そして吐き気、下痢、骨髄抑制による感染症や貧血。

先ほども書きましたが抗癌剤は癌に特化した薬ではありません。

癌によく効く、ということはその分その他の細胞にもよく効くので、副作用も出やすいということです。

我々獣医師はただ教科書的な話をすればいいというものではありません。

しっかりここまでのリスクをお話しした上で治療を選択してもらう必要があります。

もしここまでのリスクをお伝えせずに治療のメリットだけしか伝わっていない場合、動物も飼い主さんも治療を行いながら徐々に辛くなっていきます。

そして問題なのが最初にも書いた「一度始めたらなかなか終われない」という事。

私は最初の5年間地方の病院で勤務していました。

そこでは抗癌剤治療は行っていましたが、地方だったのもありそこまでやらない方々もたくさんいました。

その時の院長に言われた一言で当時は信じられなかった言葉があります。

「抗癌剤やると次飼わなくなる人が多いんだよ」

この意味を東京に来て理解しました。

東京には動物病院が溢れており、獣医師も溢れています。

東京で勤務して思ったことは、動物医療にここまでやるのか・・・

ということ。

これは抗癌剤だけではなく様々な外科治療や内科治療に対して思ってしまいました。

特に高齢犬に対しての治療が積極的だなと感じました。

犬の寿命は15歳前後、人間だと80〜85歳といったところでしょうか。

その犬たちに対して入院を繰り返したり外科手術を行なったり、何種類も投薬をしたりしているのをみていて、自分の接してきた動物医療とは全く違うことに驚き、戸惑いました。

もちろん飼い主さんも納得していればいいと思うのですが、何種類も投薬している患者さんの中には薬を減らせないのか、と思っている方もいると思いますし、外科手術などで入院している動物たちの中には高齢のためそのまま亡くなってしまう子も少なからずいます。

高齢だから、との理由で全ての治療を断ることは当然しません。

しかし、犬は犬らしく、猫は猫らしく老後を迎える、といった選択肢もあってもいいのではと思うのです。

全ての動物を教科書的な治療に当てはめる必要はないと考えています。

私の理想は

「現在の治療内容、知識を用いながら昔のマインドで動物を飼う」

ような世の中になればもう少し楽に、楽しく動物を変えるのかなと思っています。

動物はどこまで行っても動物です。

家族ではありますが人間ではありません。

人間も犬猫も動物ですので必ず「死」を迎えます。

治療に対して意志のない動物たちの老後はとことんまで治療するのではなく、QOLを大切にし穏やかに自宅でゆっくり過ごすという選択肢もあっていいと思います。

昔の方々の飼い方は今からすると雑だったかもしれません。

しかし明らかに言えることは「ペットロス」になる方が少なく、次を飼うまでのスピードが早かった気がします。

それは動物は死ぬもの、というのを本当の意味でわかっていたからその分楽しく過ごさせてあげたい、という気持ちが強かったのではないかな、と個人的に思っています。

今の人たちも頭では「死」をわかっていますが、と同時に「うちの子に限って死なない」とどこかで思っているのもまた事実なのではないでしょうか?

そのため「生きること」よりは「死なないこと」にフォーカスしすぎている気もします。

皆さんが動物を飼う目的は「楽しむため」なはず。

その中で必要な治療はもちろんありますし、治療をしてあげることで動物が楽になり、その後の生活が豊かになるならもちろんしなければいけません。

しかし治療によって逆に副作用などで苦しんだり、日々の生活の質が落ちるのであればその治療は見直してもいいと思います。

すべては動物とその飼い主のために

コメント

  1. いつも先生には元気にしていただいていますありがとございますわたしは苦しみの90日より楽な30日を望んでいます。自分ならそうします。完治する癌ならともかくそうでないがんはなるべく猫なら猫らしく過ごさせてあげたいです。

  2. おすしと彩ちゃん、時々恵美ちゃん より:

    この回、神回‼️

    「死なないこと」より「生きること」に重点置かなきゃ
    だって「今」しかないから

    その「今」を常に大切な時間にしていれば、ずっと充実した時間になるはず

    • キヨ より:

      「生きている」というのは今を生きることで、「ただ死んでないこと」ではないってことですね〜

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