こんにちは。
今日は動物、特に犬の行動障害について当院で行っている新たなアプローチ方法をお知らせします。
犬の行動障害はストレスはその他の理由で
・尻尾を追いかける
尻尾を追いかけすぎると尻尾を噛みちぎってしまうこともあります
・皮膚、手足、ペニスを舐める
舐め壊すとそこ自体の皮膚炎がひどくなり治療困難になります
・飼い主さんに噛み付く
などの行動を起こしてしまいます。
これらの行動は時に自分の体や飼い主さんの体を痛めつけることがあり、動物を飼う上でのQOL(生活の質)は格段に落ちてしまいます。
このような行動を行う場合、まずはどこかに痒みや痛みがあり気にしているのか、体の不調があるから不機嫌になり攻撃行動を取るのか、といった見極めはしなければいけません。
明らかな異常がない場合は精神的なものを疑うことが多いです。
もしも精神的なものが原因で上記のような症状を示している場合、根本的な治療はそのストレスになっているものを取り除くしかありません。
一番多いのは飼い主さんがお仕事などでお留守番が多かったりとか、家にいてもあまり相手ができないことによる暇つぶしの一環で舐めてしまうことだと思います。
このような場合、家にいる時であれば遊ぶ時間を増やしたり散歩時間を増やすことによってストレス解消になるかもしれません。
しかしお仕事などで家に居れない時、仕事を変えるという選択肢はなかなか取れないと思います。
そのような根本的な解決が難し時、現在の獣医療では薬、サプリの使用を勧めています。
サプリメントにはストレスを軽減してくれるミルクプロテインを用いたものが有名ですが、正直今まで明らかな効果を実感できたことはありません。
薬に関しては様々なタイプの薬が使用されます。
てんかん発作の時に使用する「抗てんかん薬」などから始まり症状がひどくなるようなら、人間の鬱の時に用いる「向精神薬」なんかが用いられることも多いです。
向精神薬は確かに効果があることが多いですが、人間でも減薬すると禁断症状が現れ、飲み続けなければいけないケースも多いのと同様、犬猫でもなかなか減らせない事が多いです。
またその減らし方もシビアになってきます。
私は最近獣医学書だけでなく人間も含めて様々な本を読んでいます。
そこで興味深い学問を目にしました。
「オーソモレキュラー」というのをご存知でしょうか?
オーソモレキュラーとは「栄養療法」や「分子栄養学」と表現されることもある、いわゆる「サプリメント」を用いて体の代謝を活性化させてあげることにより体調不良を改善するものです。
人間のオーソモレキュラーを調べていると、あるビタミンが統合失調症や行動障害、鬱やストレスなんかに用いられていることを見つけました。
そのビタミンは「ナイアシン」というものです。
もしかしたらあまり聞き馴染みのないものかもしれません。
ナイアシンはビタミンB3の別名です。
ナイアシンは糖質、脂質、タンパク質の代謝に不可欠です。
つまりナイアシンが不足すると様々な栄養素を代謝できなくなるので、体には様々な不具合が生じる可能性があるということです。
ナイアシンは以下のような疾患に効果があると言われます
・ペラグラ(皮膚炎、胃腸炎、精神障害などを引き起こす免疫力が低下する病気)
・関節炎
・高脂血症、血管障害
・糖尿病
・統合失調症、学習障害・行動障害、鬱、ストレス
・アレルギー
全身の代謝に関与しているので実に様々な疾患に効果がありますが、特に精神疾患にもナイアシンが効果的なのです。
実際に私の知り合いにも気分が落ち込むことが多く精神内科に通っている方がいますが、向精神薬と共にナイアシンを処方されているようです。
ナイアシンを服用していると、向精神薬を使用する頻度が少なくて済んでいるようだと話していました。
さて、これを動物にも使用できないかと思い調べてみましたが、残念ながら動物医療においてオーソモレキュラーの考え方は全く一般的ではなく、確立した治療量や治療に対しての知見はありません。
しかしながら薬用量マニュアルにはナイアシンの容量が載っているため、それを元に行動異常を起こしている犬たちを治療し始めています。
今まで使用した具体的な症状は
・尻尾を執拗に追いかける
・ペニスを舐める
・飼い主さんに噛みつく
・痴呆で夜鳴きが激しい
などです。
結論から申し上げると、半数以上の子たちに行動の軽減が認められています。
その中には抗てんかん薬や他のサプリメントを使用しても目立った改善が認められなかった子たちも含まれます。
さらに嬉しいことに首が痛くて怒っていた子は首の痛みも軽減したのか、おもちゃを加えて触れるようになったとのことでした。
関節炎にも効くかもしれません。
さて、気になるのは副作用です。
ナイアシンは最初「ナイアシンフラッシュ」といって、人間だと顔や皮膚が赤くなり、気持ち悪くなったり吐き気がしたりすることが起きます。
特に高容量で飲んだ場合はその副作用が出やすく、実際に私もフラッシュが出ました。
しかしこの副作用は数時間で落ち着きます。
動物に使用する場合は少なめから始めていますので、今まで明らかなフラッシュを経験したことはありません。
しかし何度か吐いてしまった子は1頭だけいました。
長期的な副作用は肝酵素が上がってしまうなどあるみたいですが、これはやめればすぐに落ち着くとのことです。
もしもこのようなビタミン剤で行動障害が改善されるのであれば、向精神薬などを使用を控えられQOLが上がるのではないかと考えています。
もしお困りの症状がある方はご連絡ください。
コメント