こんにちは。
お久しぶりです。
なんだかんだ色々と忙しかったので更新が遅れました🙏
今日は「今までの常識を見つめ直そう!!」のコーナー〜〜
今日のテーマはズバリ「手術」についてです。
動物病院では様々な手術を行なっています。
避妊去勢から異物、皮膚や体の中の腫瘍の摘出、骨折や椎間板ヘルニア、そして歯科治療に至るまで実に様々な症例の手術を行なっています。
普段当然のように行なっているこのような手術ですが、最近思うことがありまして・・・
「その手術、本当に必要?しなくてもQOLにも寿命にも関係なかったんじゃない?」
「実はしなくてもよかったんではないか」
こう思うことが結構あるんですよね。
教科書的には手術が選択される、と書いてあっても内科で改善したり何もしなくても何も起こらないこともそれなりにあるんです。
ということで今日は手術について改めて考えたいと思います。
まず手術をはじめ西洋医学の成り立ちをご存知でしょうか?
諸説あると思いますが現代に行われている西洋医療は基本的には救急疾患に対応する「対症療法」です。
その医療が元々使われていたところは「戦場」なんです。
戦争中は様々な怪我や感染症に侵されます。
兵士たちが病気や怪我をしてしまうとその軍の兵力は落ちてしまいます。
ですのでその兵力を一早く元に戻すために西洋医療が活躍してきた、と聞いたことがあります。
もちろん諸説ありますのでこれだけ鵜呑みにするわけにはいきませんが、基本的に西洋医学はそのような救急の場合には最大限に威力を発揮します。
ということは・・・
手術に関しても元は骨折などの怪我や内臓破裂の大量出血など、いますぐに処置を行わないとダメなような症例が対象だったと考えられるわけです。
基本的には「事故」ですね。
さて、こう考えると今現在行なっている手術はどうなのでしょうか?
動物において「事故」にあたるものは何か、を考えてみました。
骨折、脱臼などの整形疾患
交通事故による内臓破裂
異物誤食
喧嘩などによる裂傷
これらがいわゆる「事故」にあたるものではないのでしょうか?
このような場合は状況によってですが手術が推奨されていいと思います。
もちろん脱臼や軽度の骨折などでは関節をはめたり外固定処置で治ることもありますが、基本的には手術になることが多いのではないかと思います。
それでは事故以外の救急疾患で手術が必要になってくるのはどのような時なのでしょうか?
(これはあくまでも私個人の考えですし、同じ症例はいませんのでその都度考えなければいけませんが、現時点ではこう考えています)
・胃捻転、腸捻転
これに関しては手術をしないと最悪数時間でなくなってしまうことがありますので、緊急手術が必要だと考えています。
・臍ヘルニア(でべそ)、鼠径ヘルニアなどに腸や腹腔内臓器がハマってしまった場合(嵌頓)
この場合、本人には激痛が走るケースが多いです。
嵌頓してしまうとその臓器は血流障害を起こして壊死する可能性がありますので、一早く解除してあげることが必要だと思います。
・腫瘍の破裂に伴い出血が止まらない場合
脾臓腫瘍や肝臓腫瘍などの腹腔内腫瘍が破裂すると、時として出血が止まらないケースがあります。
もしくは止まったとしても腫瘍が脆くてまたすぐに出血してしまうことも多いです。
こういうケースは直ちに出血の元になる腫瘍を摘出する必要が出てきます。(そのほとんどは血管肉腫というとても進行の早い腫瘍)
また皮膚にできる血管肉腫もありますので、皮膚の腫瘍が破裂して出血が止まらない場合は緊急手術が必要になることもあります。
今を思いつく限りではここまでは自分なら直ちに手術を行いますし、教科書的にも手術が推奨されています。
では教科書的には手術が推奨されていても私個人としては内科でも十分に治療ができると考えている疾患について挙げてみたいと思います。
(もちろんケースバイケースですので全ての動物に当てはまりませんので、そこはご了承ください)
・椎間板ヘルニア
さて、いきなり異論があるかもしれませんがとりあえず書かせてください。
椎間板ヘルニアは椎骨(背骨)の間の椎間板物質が硬くなり椎間板から飛び出て脊髄を圧迫することにより痛みや麻痺が生じる病気です。
教科書的にはざっくりいうと歩けるようであれば内科でいいけど、歩けない、立てない場合は手術が推奨されています。
が、本当に外科手術をしないと治らないのでしょうか?
また外科手術をすれば治るのでしょうか?
私が最初にいた病院は椎間板ヘルニアの手術をしない病院でした。
その時の院長が言っていたことは「内科でも治る子が多い」とのこと。
教科書をよく読んでいた真面目な私にとってはこの発言はとてもじゃないけど信じられませんでした。
どの教科書にもセミナーでも、椎間板ヘルニアで歩けなかったり立てなくなっていたら手術が推奨されていたからです。
しかし・・・
実際にその病院で数ヶ月に1頭椎間板ヘルニアが来院していましたが、そのまま歩けなくなってしまった子は1頭しかいませんでした。
その子は膀胱麻痺、肛門の麻痺があり痛みを感じない、いわゆる「グレード5」の状態です。
ちなみにグレード5は手術をしても五分五分と言われています。
つまり手術をしなかったから治らなかったのか、手術をしても治らなかったのか、そんな症例だったということです。
それ以外の子たちは症状が改善し割と普通に歩けるようになっていきました。
しかもほとんどリハビリもしないでです(当時はリハビリが大切、といった概念が今よりも乏しく、私もリハビリの重要性を認識しておらず知識もありませんでした)
2軒目の病院も椎間板ヘルニアの手術は行っていませんでしたが治っている症例は多かったです。
逆に救急病院勤務の時はほぼ手術を行なっていましたが、治らない子もそれなりにいました。
ここで至った結論があります。
「椎間板ヘルニアは治る子は内科でも外科でも歩けるようになるし、治らない子は何をやってもダメ」
「外科をした方が早く歩けるようになるかもしれないけど、内科でも十分に歩けるようになるし、むしろ周囲の筋肉のダメージ(拘縮)を考えると内科の方が動物には優しい」
なぜ歩けるようになるのかというと、飛び出てしまった椎間板物質を遺物とみなしてマクロファージというお掃除担当細胞が食べにきてくれる、というのを聞いたことがあります。
実際に多発性の椎間板ヘルニアで手術を行わなかった症例の1年後のMRI検査を見たことがありますが、飛び出ていた椎間板物質が引っ込んでいました。
画像の先生がマクロファージが食べると言っていました。
ってことは手術、要らなくない??というのが私の結論です。
・胆嚢破裂、胆嚢炎、胆管閉塞
さて、今一番どうしたら動物への負担がなく、症状が改善するのかを悩んでいる病気が胆嚢系の疾患です。
これも教科書的には外科手術一択、みたいな風潮があります。
実際に救急病院でもほとんどの子は手術を行なっていました。
でもここでも謎が・・・
手術できなそうだから内科でいく子がそのまま生きていたり、逆に手術した子が結構なくなっていたり・・・
ただこれに関しては今のところ結論は出ていません。
手術をして元気に回復している子が多くいるのは事実だからです。
しかし一つ言えることがあります。
「全ての症例において手術が必要だということはなく、また手術をしたことにより逆に悪化してしまう子もいそう」
この見極めが肝心なのだと思います。
もちろんこれは胆嚢系の疾患に限ったことではありません。
その他の疾患でも手術をするにしてもその見極めが大切になります。
・尿管結石
これも手術をするかどうか悩むところです。
救急病院では基本的に手術ですが、点滴を行うことにより尿管結石が流れるケースも多々存在します。
これもケースバイケース。
その見極めが大切です。
と、ここまで書いてきた内容をまとめると
「怪我や事故などは基本的には外科対象、内科疾患は内科管理でも改善するケースが多くある」
と言ったところでしょうか?
今日はこの辺で。
後日腫瘍やその他の外科対応疾患についても書きたいと思います。
コメント
手術もいろいろ微妙なんですね、飼い主としてはほんと手術なしの人生おくらせたいですね